ファミコングランプリII 3Dホットラリー

ファミコングランプリII 3Dホットラリーは、任天堂が1988年4月14日に発売した、ファミコンディスクシステム用レースゲーム。同じくディスクシステムで発売されていた、ファミコングランプリF1レースの続編という位置付けです。ゲーム内容は、世界で最も有名なゲームキャラクターであるマリオが乗るラリーカーを操作し、制限時間内にゴールを目指すというものです。まあ、本作の車は、マリオカートのような運転手がむき出しのものではなく、一般的なラリーカーですので、レース中は基本的にマリオの姿は確認できないのですが…。車は全部で3種で、それぞれスピードや耐久力などに一長一短があり、コースによって上手く乗り分けることが、勝利へのカギとなります。ちなみに本作は、マリオやゼルダなど数々の名作を生み出し、世界一のゲームクリエイターと称される宮本茂氏と、現在の任天堂社長である岩田聡氏が、初めて一緒に仕事をした作品です。

3Dホットラリーの売りの一つは、全国のプレイヤーとタイムトライアルができたことです。現在のゲーム機は、全てインターネット接続が可能になっていますので、世界中の人と一緒に、リアルタイムでレースを行うことは容易になりました。ですが、1988年当時にインターネットは存在しませんでしたから、離れた場所にいるプレイヤーと一緒にレースはできません。そこで本作では、ディスクファックスが活用されました。ディスクファックスとは、全国のおもちゃ屋などに設置されたディスクシステム用の端末です。プレイヤーは、自分の遊んだ3Dホットラリーのソフトをお店へ持っていくことで、ソフトに保存されたスコアやタイムなどのセーブデータを読み取り、任天堂へ送信することができたのです。この機能を利用することで、リアルタイムではありませんが、全国のプレイヤーとスピードランキングを争うことができたのです。なお、ランキング上位者には、記念品として特製文具セットが贈られました。

しかし、3Dホットラリー最大の特徴は、タイトルにもなっている3D機能です。2011年に発売されたニンテンドー3DSは、裸眼立体視が可能な画期的なゲーム機として人気を博していますが、当然ながら、1988年に3DSのような裸眼立体視の技術はありません。本作では、ファミコン3Dシステムという専用のゴーグルを使用することで、立体視を実現しています。テレビには右目用の映像と左目用の映像が交互に映し出され、ゴーグルのシャッターがそれに同期して交互に高速で開閉することで、3D映像を表現しているのです。いわゆる、市販の3Dテレビなどと同じ、フレームシーケンシャル方式です。なお、フレームシーケンシャル方式や、3DS裸眼立体視の仕組みは、こちらのサイトで詳しく解説されています。
http://www.gamegyokai.com/column/3ds-ragan.htm

インターネットが存在しない時代に、離れたプレイヤーと擬似的に遊べる仕組みを実現していたことといい、まだまだ未熟だった3D技術を積極的に活用していたことといい、プレイヤーに新たな楽しみを提供しようという試みは、実に任天堂らしいと感じます。