ハードドライビン

ハードドライビン(HARD DRIVIN')は、1989年にアタリ社がアーケード用に発売したレースゲーム(ドライビングシミュレーター)。後にいくつかの家庭用ゲーム機にも移植されましたが、ここでは、1990年12月21日に発売されたメガドライブ版(こちらの発売会社はテンゲン)について記述します。

現在のゲームソフトは、その多くが3D作品になっていますが、世の中に3Dゲームが普及し始めたのは、1993年にセガがアーケードで発売したバーチャファイター、及び、1994年にソニーが発売したプレイステーションの登場以降です。それまでのゲーム機は、まだまだ性能が低かったため、ほとんどが2D作品でした。

そんな2D時代に登場したアーケード版ハードドライビンは、世界初の3Dレースゲームだったのです。そして、その移植であるメガドライブ版も、世界初の家庭用3Dゲームなのです(同日に、同じくメガドライブスタークルーザーという3Dゲームも発売されています)。3Dゲームが世の中に広まる4〜5年も前に、既に3Dゲームが誕生していたのは驚きです。いわばハードドライビンは、3Dゲームの先駆け的な存在なのです。

しかし、前述の通り、当時のゲーム機の性能は低いです。近年のグランツーリスモForza Motorsportといったドライブゲームは、それこそ実写と見紛う程にリアルな描写がなされていますが、このハードドライビンは、車や背景はカクカクのポリゴンで表現されており、カラーものっぺりとした単色で、リアルとは程遠い、何とも物足りないグラフィックであることは否めません。とはいえ、ゲーム市場にいち早く3Dを取り入れようとした、本作の心意気は評価出来ると思います。

ゲーム内容は、決められたコースを、制限時間が無くなるまで何周も走り続けるというもので、ゴールは存在しません。全てのコースが、スタート直後に右と左に分岐しており、左側へ行けば、オーソドックスなコースを如何に早く走れるかに挑戦する「スピードドトラック」になり、右側へ行くと、アクロバティックな走りを要求される「スタントトラック」になります。スタントトラックは、ジェットコースターばりに360度縦回転するループコースや、中央部が途切れた跳ね橋を、カーアクション映画さながらにジャンプで飛び越える場面があったりと、かなり破天荒な内容になっています。

本作の特徴として、インスタントリプレイ機能が挙げられます。近年のレースゲームのほとんどに、以前に走行した様子(スタートからゴールまで)を視聴出来るリプレイ機能が備わっていますが、本作のインスタントリプレイは少々趣が違っており、操作をミスしてクラッシュした時など、直後にリプレイが始まり、事故を起こした瞬間が改めて再現されるというものになっています。このインスタントリプレイ、本来は、ミスした状況を再確認し、次のプレイへ活かすという目的があるのだと思います。しかし、多くのプレイヤーは、次第にどれだけ面白いインスタントリプレイが出来るかということにのめり込むようになり、真面目にコースを走ろうとはしなくなってしまったのです。こうした楽しみ方が出来るのも、本作の魅力の一つと言えるでしょう。