ランナバウト

ランナバウトは、1997年5月23日に5800円で発売されたプレイステーションドライブゲーム。開発はクライマックス、販売はやのまん。本作はその内容から、レースゲームというよりも、ドライビングアクションゲームと言った方が正しいでしょう。

<ストーリー>
ある富豪がオークションで大昔の棺を落札。その棺(中身は数千万ドルの財宝)を開けるためには3つの鍵が必要。富豪はその鍵を入手するために、"合法・非合法を問わずに目的を遂行する男(主人公)"に探索を依頼する。奪われた鍵を手に入れるために、主人公は車を走らせるのです。

一般的なレースゲームとは違い、ライバルカーのようなものは存在せず、ゴールへ向かって走るのは自分の車だけです。また、コースもサーキットではなく、普通の街中を走ることになります。コースには時間制限がありますので、基本的には通常のレースゲームのようにできるだけ早くゴールへたどり着くことが望ましいのですが、ただ単に早くゴールするのではなく、与えられたミッション("鍵を奪って逃げた車を見つけて捕まえろ"など)をこなしつつゴールしなければならないのです。

そして、ランナバウト最大の特徴は、コース上にある障害物を、車で体当たりして破壊できることです。車には耐久力が設定されており、障害物に接触することでダメージが蓄積していきますが、耐久力が限界になるまではいくらでも破壊が可能です(ダメージが限界を突破するとゲームオーバー)。周辺を走っている他の車はもちろんのこと、ガラス・看板・電話ボックス・屋台・電車(!)など、ほとんど全ての障害物が破壊できるのです。ちなみに、障害物を破壊する毎に、画面右上の被害額がどんどん増えていきます(一種のスコア)。全ての障害物を壊しながら進むも良し、逆に一切障害物を壊さないで進むも良し、楽しみ方は様々です。ただ、人間は近づくと必ず逃げる(ものすごく手抜きな挙動で)ので、殺人は起こりません。そのため、残虐的な印象は薄く、街中を破壊して回るおバカなゲームというイメージになっているのです。

登場する車種も非常にユニークです。レースゲームでよくあるスポーツカータイプの車種も存在するのですが、それ以外にも、スクーター・バス・ダンプカー・ゴミ収集車・ミニ四駆・戦車(砲弾を発射して障害物を破壊できる)など、かなりバラエティに富んだラインアップになっているのです。また、車種によってスピードやステアリングや耐久力などが全然違う(スクーターは小回りがきくがすぐ壊れる、戦車はすごく耐久力が高いがスピードは遅い、など)ため、その選択も重要になっています。

前述の通り、コースはサーキットではなく街中です。早くゴールするためには、通常の道路以外の場所も活用する必要があります。窓ガラスを突き破ってビルを貫通したり、建設途中の高速道路をジャンプして渡ったり、地下鉄へ進入して線路上を走ったりなど、意外な場所がショートカットできることも、本作の面白さの一つです。

奇天烈な車に乗って、街中を破壊して回りながら、道なき道を行く。これがランナバウトの醍醐味なのです。

F-ZERO

F-ZEROは、任天堂が1990年11月21日に6800円で発売したスーパーファミコン用レースゲーム。スーパーファミコンのローンチタイトル(本体と同日発売のソフトの意味)でもあります。タイトルのF-ZEROとは、F1(フォーミュラー・ワン)に因んで付けられた名称です。

登場する車は現実のものではなく、コース低空をホバーして走るという、かなり未来的(空想的)なものです。本作の特徴は、従来のレースゲームとは一線を画したハイスピード感です。スーパーファミコンには、ファミコンにはなかった画面の拡大・縮小・回転の機能が備わっており、これらの機能によって、そのスピード感がより強調されるのです。また、コースには、ダッシュゾーン・ジャンプ台・地雷などが設置されており、そのハイスピード感と相まって、よりスリリングなレースが体験できるのです。

前述の通り、F-ZEROスーパーファミコンのローンチタイトルです。スーパーファミコンのローンチタイトルは2本あり、もう1本はスーパーマリオワールドでした。マリオといえば、その名を聞いたことがない人はまずいないであろう、超有名ゲームソフトです。ファミコンで発売された初代スーパーマリオブラザーズは、日本国内では681万本、世界累計では4024万本を売上げており、世界で最も売れたゲームソフトとしてギネス登録されているのです。

マリオシリーズはこれだけ人気の高い作品ですから、スーパーマリオワールドも、発売前から大きな期待を集めていました。その期待通りに、スーパーマリオワールドは初期のスーパーファミコン市場を大きく牽引したのです。(最終的に、スーパーマリオワールドは国内累計で355万本を売上げる大ヒットとなりました)

つまり、初期にスーパーファミコンを購入したユーザーのほとんどはスーパーマリオワールドが目当てであり、それ故に、F-ZEROの注目度はあまり高くはありませんでした。F-ZEROは、スーパーマリオワールドに負けないぐらいの完成度を誇っており、ゲームファンの間では非常に人気が高いソフトです。しかし、残念ながら一般的な人気はあまり得られませんでした(一応、続編は何作も発売されるぐらいの人気はありましたし、随分後にアニメ化もされたのですが)。F-ZEROは、スーパーマリオワールドの影に隠れて、人気や売上げも今一つに終わってしまった不遇なソフトなのです。

リッジレーサー

リッジレーサーは、1994年12月3日にナムコ(現バンダイナムコ)から6090円で発売されたプレイステーション用レースゲーム。

タイトルのリッジレーサーとは"峠の走り屋"という意味です。リッジレーサーは、前年には既にアーケードゲームとして稼動していましたが、ここでは、その移植であるプレイステーション版について記述します。

本作は、プレイステーションのローンチタイトル(本体と同日発売されたソフトを指します)でもあります。リッジレーサーは、本作以降もいくつもの続編が発売されましたが、そのほとんどが、各種ゲーム機のローンチタイトルとして発売されています。リッジレーサーは、新型ゲーム機の性能を表す、いわば試金石のような存在と言えるかもしれません。

特に、プレイステーションハードでその傾向が顕著で、プレイステーション2リッジレーサーV、PSPリッジレーサーズプレイステーション3リッジレーサー7、Vitaのリッジレーサー(タイトルに捻りがない)と、プレイステーションハードのローンチタイトルには必ず名を連ねているのです。

この注力ぶりからも一目瞭然ですが、ナムコソニー・コンピュータ・エンタテインメントのハードへ肩入れしているメーカーです。というよりも、嫌任天堂と言った方が正しいでしょうか。ナムコはかつて、パックマンゼビウスなどでファミコン市場を盛り上げていた存在です。その大きな貢献から、任天堂ナムコに対し、ソフト発売タイトル数の制限(ファミコンはソフトの粗製濫造を避けるため、メーカーの年間ソフト発売タイトル数が制限されていました)を緩くしたり、ロイヤリティ(ソフトメーカーは、ソフト販売本数に応じて、ハードメーカーへ一定の料金を支払わなければなりません)が安価であったりと、相当な優遇措置がされていたのです。ところが、ファミコンが爆発的な普及を見せると、契約更新において、任天堂はこのナムコへの特別待遇撤廃を告げたのです。これは、最初から期間限定の特別待遇だったのですが、ナムコにしてみれば、任天堂に裏切られたとしか思えない行為です。この確執があってから、ナムコ任天堂を敵視=他ハード(プレイステーション)に注力するようになったのです。

本作では、実在の車やコースは収録されておらず、全てオリジナルのものとなっています。ドリフトを駆使した高速のコーナリングや、コースを反対に進む逆走モード、超スピードで疾走するデビルカーの存在など、リアルとは程遠い内容ではありますが、その分、ゲームならではの爽快感を重視した作りになっているのです。ゲーム中に視点切り替えが可能で、車内から実際に運転しているかのような視点のドライバーズ・ビューと、後方からの第三者視点であるマイカービューの二つから選択できます。

また、本作ではおまけとして、ゲーム起動時のロード時間中に、ナムコの往年の名作ギャラクシアン(簡易版)が遊べるようになっています。プレイステーションはソフトがディスクメディアのため、どうしてもデータを読み込むためのロード時間が必要になるのですが、その間にちょっとした時間つぶしができるのは嬉しいものです。ロード時間というマイナスの要素を、上手くプラス方向へ持っていくこのアイデアは素晴らしいと思います。これが好評だったのか、以後のリッジレーサーシリーズでも、ロード中にミニゲームが遊べるものは多いです。

上記の通り、リッジレーサーシリーズは、たいていローンチタイトルとして発売されています。ですが、それはハード発売時期に合わせてソフト開発を進めなければいけないということでもあり、それ故に、作りこみが甘いと評価されてしまう場合も少なくないです。とはいえ、ハード発売日から遊べるということは魅力的でもあり、根強いファンがいることも事実なのです。

グランツーリスモ

グランツーリスモは、プレイステーションドライブゲーム

ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下SCE)が、1997年12月24日に5800円で発売しました。開発はSCEの子会社であるポリフォニー・デジタルが担当。グランツーリスモとは、長距離を高速で走ることができる高性能車を意味する言葉です。主に"GT"と略されます。

ゲーム内容は、単独のレースを手軽に楽しめる"クイックアーケード"と、レーシングドライバーを仮想体験する"グランツーリスモモード"の二種のモードがあります。グランツーリスモモードは、レースに出場して賞金を得て、そのお金で車を買い替えたり、チューンアップしていくことで、更なる速さを追求していくというもの。

本ゲーム最大の特徴は、実在する車をリアルに再現している点です。トヨタ、日産、ホンダ、ゼネラルモーターズなどの様々な有名自動車メーカーとライセンスを結んでおり、これらのメーカーの実在する100種類以上の車種を操作してレースが行えるのです。ただし、ポルシェやデ・トマソといったメーカーからはライセンスを得られなかったため、これらのメーカーの車種は登場していません。(本作だけでなく、以後のグランツーリスモシリーズ全てに未登場です)

グラフィックの美しさも、本作の特徴の一つです。車体のモデリングは実在の車種を忠実に再現しているのはもちろんのこと、それに加えて、環境マッピング※を用いて、車体に周りの景色が映りこむ様子までも表現しているのは、当時のレースゲームではほとんど見られなかった技術です。こういった表現が可能になったのは、プレイステーションというハードの性能によるところが非常に大きいでしょう。
※3Dグラフィックスにおいて、物体の表面に擬似的な映り込みを再現する手法。

そして、独自開発された物理エンジン※を用いることで、見た目だけでなく、加速度やステアリングといった挙動部分までも、実物を忠実に再現しているのです。
※ここで言うエンジンとは、自動車の動力部のことではなく、質量・速度・摩擦などの力学的現象をシミュレートするゲーム開発用ソフトウェアのこと。

更には、エンジン音までも実在の車を再現している程のこだわりっぷりです。このようなことから、本ゲームのジャンルはレースゲームと言うよりも、リアルドライビングシミュレーターと言った方が正しいでしょう。ただ、そのあまりのリアル志向故に、ゲームとしての難度はかなり高くなっています。初心者が気軽に楽しむことができないというのは、グランツーリスモ最大の弱点かもしれません。

ただし、当然ながら全てが完全にリアルというわけではないです。本作に収録されているコースは全て架空のものですし、(グランツーリスモ2以降は、実在のコースも登場するようになりました)車が接触した場合も、大破して走行不能になったりはしません。まあ、そのあたりは、ゲームとして正しい表現であるとも言えるでしょうが。

以上のように、(一部を除き)徹底的にリアルにこだわった点が評価され、グランツーリスモは多くのファンを獲得。その結果、日本での累計販売本数は255万本、世界全体では1000万本以上の大ヒットを記録しています。グランツーリスモは、SCEを、そしてプレイステーションを代表するゲームとなったのです。